「金」を地球上で最初に発見した人は、動揺したに違いありません。今までに手にした石や他の金属(銀・銅)よりも重く、美しく輝いている。その人にとっては宝物となり、最初は大切に保管されていただろう。ある時、取り出してこれを叩いてみると、柔らかくどんな形にもたやすく加工することができることに気付きました。やがて、その人は保管しておくのではなく、身辺に飾るための加工を施しました。そして、いつまでたっても、色があせる事もなく錆びることのないことに驚きました。ただ、石や貝殻と違って、「金」を求めることは当時でも大変な時間を要しました。したがって、この時代でも「金」は稀少なものであるがゆえに、装飾品として崇められました。「金」需要の初期の段階は、「飾り物」だったのです。

  「農耕が始まったのは、紀元前6000年以上も前からだと言われていますが、初期の段階は、自給自足の範囲でありましが、農耕技術が発達するとともに余剰生産物が獲れるようになりました。余剰生産物を貯えていても時が経つに連れて劣化していくか、他の者に盗まれる可能性もありました。そこで、物物交換が始まりましたが、必要とするものは限られており、それ以上のものを交換しても、また同じ問題が発生しました。そんな中で登場するのが貨幣です。余剰生産物を売って、お金で貯えておけば、いつでも欲しいものが手に入るようになりました。しかし、貨幣である以上統一基準が必要であり、誰もがその価値を認めなければなりません。その為には、都市国家が形成され、その国を統制する君主が登場することになります。そして、国家権力の形成・発展には、武力と貨幣が欠かせなかったのです。武器は石や青銅で加工されましたが、当初の貨幣は、貝殻や石でありました。しかし、貝殻は摩耗しやすく、石は運搬に不便であり、何よりも他国との取引には通用しなかったのです。

  やがて、いつまでたっても錆びることのない「金」が、貨幣として最も相応しいものであることは、当時でも誰もが認めるようになりました。そして、国家権力によって価値基準が統一された「金貨」が登場することになります。「金貨」は、他国との交易活動に大いに力を発揮しました。このように、「金」は紀元前の時代から、貨幣となり権力の象徴となったのです。

  近世においても、1800年の半ばには、当時の世界の覇権国である英国が最初に金本位制を実施し、それ以降1900年の初頭までにドイツ、フランス、オランダ、ロシア、アメリカ、オーストリア、日本が金本位制に移行しています。

  今までの「金」の歴史の中で、「金」が金本位制として登場したことが一番大舞台であったと言っても過言ではないでしょう。

  「金」の供給には限度があり、金本位制が崩壊しましたように、誰もが「金」を欲すれば「金」は足りません。そんな中で、現在の「金」の需要は保たれています。

  以下に現在、「金」がどんなところに使用されるかを見ていくことにしましょう。


  世界の「金」の需要の中で宝飾品需要が、金需要の70%から80%を占めます。
  同じ金宝飾品でも、資産価値の高い宝飾品とファッション性の高い「夢」を求める宝飾品に分かれます。さらに、宝飾品とは言えませんが「金」で加工された仏具や工芸品も日本では人気があります。こういった金工芸品を買われるお客様の考えは、地金を持っていても金庫に入れておくだけで何の楽しみもない、それなら地金を工芸品に換えて楽しみながら財産にしようということです。

  世界の国々で宝飾品の嗜好も持ち方も異なりますが、世の中に女性がいる限り金宝飾品の需要は、これからも安定した需要であることには違いありません。


  「金」は延性・展性に富んでおり、電気伝導率も「銀」、「銅」に次いで第三位であり、なんといっても耐食性に優れていることから、工業用素材としてなくてはならないものとなっています。特に近代の電子工業の発展に「金」は大きく貢献し、その中でも金線は、集積回路用素材の代表格で、「金」の特性である導電性が高く、展延性に富み、柔らかく、酸化しないで耐蝕性に富んでいる点が生かされています。金線は20ミクロン以下の極細線で、女性の毛髪の1/3以下ですから展延性に優れていることが必要であり、極細線に電気を流すので当然低効率が小さくなくてはなりません。また、一般のLSIは、樹脂でモールドされていますので水分の吸湿があり使用材料には、耐蝕性が要求されます。

  その他「金」は、上記に挙げた「金」の特色を生かして、歯科用の素材としても重要な役割をなしています。近年、「金」から他の新素材の移行も行われていますが、歯科用金の需要にはあまり影響を受けていません。


  「金」の需要としては、前記した宝飾品需要と工業用・歯科用需要で80%から90%を占めますが、残りの10%から20%が投資用需要ということになります。

  世界の人が投資用として「金」を求める場合、代表されるのが地金型金貨(ウィーン金貨、メイプルリーフ金貨等)ですが、その他に大口購入になると1kgや500gの金地金のバー(延べ棒)も人気があります。新たな投資需要としては中国人の「金」購入や「金」のETFが注目されますが、今後は投資需要の動向によって金価格が大きく変動する可能性が十分あります。




Copyright 2016 株式会社G.T.ミッション All rights reserved.